2017年1月17日火曜日

哲学入門 A6106 A判定

第一設題 全6章のうち、一つの章を選んで、まずその内容を正確に要約せよ(1,600字ほど)。その上で、自分が疑問に思うこと、批判すべきだと思う点を詳述せよ。

 第四章「現定と無限」納富信留  要約
『プラトン主義』を焦点に、その源流である「ある(存在)」と「なる(生成)」についてのプラトンの思索を検討する。プラトンの哲学は、先行するギリシア哲学との対決を通じて確立され、生成する世界の把握はヘラクレイトスの「流動説」への徹底した批判から確保された。ではまずプラトン哲学とはいかなるものか。それを知るには「イデア論」といわれる形而上学を理解しなければならない。簡単に言えば「イデア」とはプラトン哲学の中心概念で、真の実在とでもいうべきものだろう。これは感覚世界の本質ともいえ、理性によってのみ認識される。つまり、本当に実在するのはイデアであり我々が肉体的に感覚している対象や世界とはあくまでイデアの「似像」にすぎないのだ。

そして先に述べた「ある(存在)」「ない(成生)」についてのプラトンの思索展開には三つの特徴がある。
①ロゴス中心:「言葉(ロゴス)」に徹底的に定位して探究する態度。独立した存在や事物を言葉がとらえるというのではなく、言葉がそれらを成立させていると考える、これは論理や法則から現実を捉える思考の基盤となる。
②絶対性・超越性:相対主義に対抗して心理の絶対性を確保し絶対的な根拠が私たちが生きるこの世界を超越していることを捉える。この見方は現象と実在の二次論の形をとることが多い。
③数学重視:学問知識の典型として数字を重視し数学的対象(数、図形、法則)を絶対的な存在理解への導入・モデルとして扱う」。数字がこの世界の現象の把握に決定的に重要であるという見方もこれに含まれる。
プラトンは上記三つの思索展開を持ちながら、先人の思想家、特にヘラクレイトスを批判した。ヘラクレイトスの主張は「万物は流動する」といった流動説を唱え、また万物は根源的実体である火の変化したものだといい、ロゴスは火であるとも言った。つまり世界のあらゆる事物の始まり・根源を「アルケー」という概念で示すがヘラクレイトスはこれを火としたのであった。この生成論に対してプラトンは「言葉」によってこそ生成変化は成り立つと考える。言葉がなくなってしまえばあらゆる事態が成立せず、生成変化すらなくなってしまうということは生成変化自体が「言葉」なのではないかという考えに至ったのである。変化する事態は事物ではなく、まさに言葉による変化以外の何物でもない。このようにプラトンは「言葉(ロゴス)」を生成論の中心にしたのであった。
 プラトンは「ある」こそが「なる」に先行し、それをなりたたせているという。なぜかといえば言葉が捉えて成立させるのはなによりもまずこの「ある」という事態を捉え、そこから「なる」にしかならないとプラトンは考えたからだ。徹底して「ある」に根拠を求めるプラトンはヘラクレイトスの批判と同時にパルメニデスを極端な論理であることからソフィストたちの相対主義の基礎づけに利用される危険を孕んでいたことを危惧し、批判的に継承することで「形」の把握の立場に至る。パルメニデスの主張は「ある」は一であり、一切の生成変化を被ることもないとし「一元論」と呼ばれるものである。しかしこれをプラトンは「ある」を「一」とあげながら「ある」と「一」という二つの名前を用いることで純粋な「一あり」という立場にならず、「一」という名前が指すものと仮に同じであったとしてもここで二つの名があり、しかも「名」もまたそれが指す対象とは別に「ある」ことには、「ある」について「言葉」で語ろうとする限り「ある」の微の多様性や、また「微」をもつという特徴自体に矛盾が発生するとした。またパルメデスの「ないは、ない」といい「ないから、あるへの変化」を否定しているのもかかわらず「ないは現表不能で「ある」」というように「ある」を付け加え混合させ自己矛盾を犯している点、限定されたはずである「ある」は「全体」が連続である以上、限定された「ある」は「多」を被り「ない」を内包している点も批判した。プラトンは真に「ある」を捉えようとすると、そこにみてとれるのは「ある」と「ない」の適切な関係、およびそれに基づいて結合され区別される諸イデアの全体、つまり真に「ある」世界をロゴスで表現し反論したと考えられる。

 プラトンはこのように終始言葉による認識を追求する。その一方で「ピュタゴラス派」の影響を大いに受けた。ピュタゴラス哲学の教説は霊魂の永続と輪廻思想、数学を根幹とした世界観などである。ピュタゴラスは「数」に特別興味をもち世界の根源は「数」であるいい、一切は奇数と偶数で示されるとした。また万物も「数」で一切の表現ができるという。プラトンは彼らの教説を取り入れ自らの「イデア」論に反映させていった。とりわけ「数」と「調和」の宇宙論に積極的であった。彼は「ある」や「ない」といった不思議な事実に様々な観点から向き合い、そこで徹底的にロゴスにおいて考え抜こうとしたのである。

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