2017年1月30日月曜日

心理学入門 第二設題

第二設題 アタッチメント理論について解説しなさい

はじめに

愛着(atatachment)とはボウルビィという人物によって提唱された概念である。この概念は、人間にとってとても大切なものとされている。多くの研究がなされており、その形成過程や障害について明らかになっている。そして幼少期の愛着の経験がその後の成長に大きく影響を与えるとされている。

アタッチメント理論とは

アタッチメント理論とは子どもと母親にとの間に形成される情緒的な絆を意味する。たとえば、生後2~3か月ごろから、乳児は自分の求めに頻繁に応じてくれる母親に対して、他の人々とは異なる反応を示すようになる。見知らぬ人への微笑が減少し、母親に対してのみ特別によくほほえみかけるようになる。また、他の人では泣き止まなくても、母親があやすとすぐに泣き止むようになる。このような現象は、スキンシップによってもたらされる快感を得るためだけではなく、養育者を安全基地として周囲の世界を探索しようとする乳児の主体的な活動によると考えたのである。
 アタッチメント理論では、乳児期に特定の人との間で質の良いアタッチメントを形成することは、こどもの安定した情緒の発達を促すと考えられている。質の良いアタッチメントは、自分が求めればいつでも応じてもらええるという信頼感を与え、不安にあふれた未知の世界への探索活動を促進する。一方、母子間のアタッチメントが弱い場合や、母子間の強すぎるアタッチメントが子供の自立を阻害している場合には、子供の情緒は不安定になる。つまり、質の良いアタッチメントは、両者の間で適度な強さの安定した情愛が結ばれている場合に形成されると考えている。

愛着の形成の流れ
愛着は養育者との相互的なやりとりによって形成される。特に、このような養育者との相互的なやりとりを通して形成される、子どもの心の中の自分や他者に対するイメージは「内的作業モデル」としてとても重要なものとされる。子どもは誕生直後から、母子間で表情や動作、言葉にならない音声などを通して、相互作用が繰り返される。たえば、母親が乳児の気を引こうと話しかけると、乳児は微笑む。さらに、乳児が声をあげたり手を振って喜びを表すのをみて、母親は自分の頭を振ったり後ろにそらしたりして答える。お互いの働きかけと応答は常にうまくかみ合うとは限らないが、次第にずれが修正され、まるでダンスしているような一体感(相互同期性)が感じられるようになる。
 こうした相互作用がスムーズに展開していくためには、母親の応答性、乳児の内的状態や信号を敏感にとらえ、タイミングよく適切に対応することがカギとなる。たとえば、いつも乳児の注意を引こうと刺激を与えても、目をそらしたままぐずったりする。母親にとって、乳児が自分を三つ目、目をそらすリズムをつかむことが必要である。また、次第に乳児は自分の欲求を伝えようと意識的に泣くようになる。泣きが空腹によるのか、痛みによるかなどと、適切に解釈して対応することも求められる。
ただし、こうした応答性は母親の人格特性によって規定されたものとするのではなく、乳児や母親を取り巻く人々との関係の中で揺れ動くと考えるべきである。乳児の個性と母親の人格特性との適合がよいほど相互関係はスムーズに展開し、母親は育児に対する有能感を深め、乳児に対して肯定的な感情を抱くことになる。
また、夫婦関係や家族の母親への支援態勢、移住環境なども密接に関連している。母親が心理的に閉塞状態に陥ると、情緒の安定性を欠き、応答性が低下するだろう。さらに、母親の生活史や育児観によっても影響される。自分の母親との関係に満足しているか、妊娠を肯定的に受け止めているか、自分自身をどのように評価しているかなどが重要である。

近年のアタッチメント理論の考え方
近年、親による乳児・児童に対する虐待が増加し、「母性」が神話にすぎないことが指摘されてからは、子どもと養育者の情緒的な結びつきのメカニズムに対する議論は盛んにおこなわれている。しかし、子どもの発達と同様、母子関係の形成にも多様性が見られ、唯一の説は定まっていない。
ハーロウという人物は、アカゲザルの乳児を母親から引き離し、二種類の人口母親模型で育てる実験を行った。母親模型には子ザルに授乳できるように哺乳瓶がつけられていたが、一つは柔らかい布で覆われた布製模型、もう一つはむき出しのままの針金製模型であった。最初に「乳児は口唇を通じて母乳を吸うことに快感を覚え、その快感を与えてくれる母親に愛情を感じるようになるとする。」と唱えたフロウトという人物の主張通りならば、布製模型に授乳された子ザルは布製模型に、針金模型に授乳された子ザルは針金模型に愛情を感じ、長時間過ごそうとするはずである。しかし、実際には、どちらの母親模型から授乳された子ザルもほとんどの時間を布製模型と接触したのである。この結果から、ハーロウは授乳そのものによって愛情がはぐくまれるのではなく、授乳の際のスキンシップにともなう快感が重要であるという結論を導き出したのである。
しかし、この接触満足説は動物実験から導かれており、人間にも当てはまるかという疑問を残す。また、父親も母親も同様にアタッチメントの対象となっているという結果が報告されてからは「乳児はまず特定の一人の人物にアタッチメントを形成する」という特殊な二者関係を強調するボウルビィのアタッチメント理論は問題が多いと考えられている。
 しかしながら、乳児期に特定の人との良好な関係を維持することができなかったために、発達上一定の障害をもつに至った子どもの例は多く、早期の母性的養育の剥奪が、その後の人生に大きな影響を与える可能性は否定できない。
 繁多は健全なアタッチメントの形成には、特に母親が①子どもの活動に敏感に、適切に反応すること ②一定量以上の相互関係があること ③子どもとの相互関係を喜びをもって行うことが重要であると考えている。

結びに変えて
このレポートにおいては特に乳児期のアタッチメントについて詳しく解説したが、の安全基地となうる保護者からの自立までにはいくつかの段階があると考えた。誕生してからすぐには視力が低いため、誰かが見えないというところから始まり、母を認識する、そしてはいはいができるようになり、歩けるようになってからは受けるだけの愛着ではなく自らの意思表示をしコミュニケーションをとりあい、相互関係を築く。アタッチメントによって不安を解消し、探索活動を活性化し、子どもに安心感を与えたり、他者との信頼関係を結ぶことは大人になり社会に出てからも必要不可欠なことだ。つまり親と子のアタッチメントはすべての土台となるのではないだろうか。
ここで、親の在り方について考えてみる。上述のようにアタッチメントによって人格の基盤ができるものだとしたら、責任は重く、常に子供に寄り添う姿勢が必要だ。しかし、これには親自身の情緒が安定していることが不可欠だ。子どもがうまれた瞬間に親に自動的になるが、人間の器としてはすぐに広くはならないと感じた。特に女性は10か月お腹で一緒に過ごしてきたのだから、母性は備わっているかもしれない。しかし、男性は実感が沸きにくいものなのだとよく耳にする。このことからアタッチメントを子どもと分かち合い、こどもだけではなく親としても子供と一緒に成長するものだと考えるのがよいだろう。
親は子どもの中に豊かなアタッチメントをはぐくみながら、自分自身も子育てを楽しみ、親として成長し続け、幸せを感じることができたのならば、子育てはなんと楽しく、なんとたくさんの幸せをくれる営みであるのかに気づくことができる。
知識だけでは子育ては成立しない。しかし、アタッチメント理論は子どもの愛し方、育て方の原則原理を教えてくれる、素敵な知識である。

参考文献 「心の理解を求めて」 橋本憲尚 佛教大学

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